「病棟を離れたいけれど、訪問看護は大変そう」
「日勤中心と聞くけれど、オンコールが不安」
訪問看護は、病棟とは働き方が大きく変わります。夜勤はなくても、オンコール(電話待機)という別の拘束があります。
当サイトでは、公表されている統計をもとに、訪問看護師の働き方、給与、応募前に確認すべき点を整理します。
この記事を書くうえで、当サイトが大切にしている確認の軸は3つです。
1つ目は、収入の下がり幅を先に計算することです。訪問看護は給与が高いというイメージがありますが、公表データを見るかぎり、そう単純ではありません。夜勤手当がない分、給与がどう変わるかを先に見ておく必要があります。
2つ目は、「夜勤がない」という言葉だけで、負担が軽いと判断しないことです。オンコールの待機は、呼ばれなくても自由にならない時間です。求人を見るときは、待機の回数と手当を先に確認してください。
3つ目は、体調がつらい場合は、転職だけを答えにしないことです。眠れない状態が続いているなら、休むことや医療機関への相談も、並べて考えてください。
先に結論:訪問看護は「日勤の楽な職場」ではない
訪問看護を検討するとき、最初に整理したいのは次の4点です。
- 夜勤はないが、オンコールがある(訪問看護ステーションで働く正規職員の回答で64.2%。回答者137人)
- 平均給与は病院勤務より低い(税込給与総額で比較)
- 1人で判断する場面が増える。相談できる体制を確認する
- 移動・記録・オンコールを含めた1日の拘束時間を聞く
「病棟より楽」と単純に比べられる職場ではありません。 負担の種類が変わるだけ、という前提で読んでください。
訪問看護の仕事内容
訪問看護師は、利用者の自宅や施設を訪問して、療養上の支援を行います。
訪問看護は、在宅医療の4つの機能のうち、退院支援・日常の療養支援・急変時の対応・看取りにかかわります。厚生労働省の資料でも、在宅療養者への支援はこの4機能で整理されています。
具体的には、次のような業務です。
- 健康状態の観察、バイタルチェック
- 医師の指示による点滴、処置、服薬の確認
- 療養上の相談、家族への説明
- 主治医・ケアマネジャー・薬局などとの連携
- 緊急時の対応と、状態変化の報告
病棟と大きく違うのは、その場に医師がいないことです。判断を求められる場面が増えます。
訪問看護ステーションは増えている
全国訪問看護事業協会の調査では、訪問看護ステーションの稼働数は20,051か所(2026年4月1日現在)で、調査開始以来はじめて2万か所を超えました。
求人の母数は増えています。ただし、事業所の規模は小さいままです。厚生労働省の統計では、1ステーションあたりの看護師は5.6人(常勤換算)。少人数の職場である点は、応募前に押さえておきたいところです。
オンコールの実態|待機は「自由な時間」ではない
訪問看護の最大の注意点は、オンコールです。
訪問看護ステーション勤務の64.2%がオンコール
日本看護協会の「2025年 看護職員実態調査」では、訪問看護ステーションで働く正規雇用フルタイムの看護職員のうち、オンコールをしている人が64.2%でした(回答者137人)。
「職場に夜勤はない」は15.3%です。訪問看護の主な勤務形態は、夜勤ではなくオンコールだと考えてください。
オンコール手当と、実際の回数
同じ協会の「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」では、オンコール手当の1回あたりの平均と、2024年12月の対応回数が公表されています。訪問看護ステーション勤務者の数字は次のとおりです
| 区分 | 1回あたりの平均手当 | 2024年12月の平均回数 |
|---|---|---|
| オンコール待機(待機のみ) | 2,233円 | 7.7回 |
| オンコール対応(電話対応) | 609円 | 5.0回 |
| 緊急出動 | 1,791円 | 2.3回 |
待機は、電話が鳴らなくても拘束されます。 呼ばれなければ動かなくていい、という意味ではありません。
緊急出動は平均2.3回ですが、これは全国平均です。 地域や利用者の状態によって、実際の回数は大きく変わります。
24時間の体制は、事業所の前提になっている
訪問看護には、24時間の対応体制を整えている事業所を評価する仕組み(24時間対応体制加算)があります。日本看護協会の訪問看護実態調査でも、この届出状況が調べられています。
つまり、オンコールは一部の事業所だけの例外ではありません。 24時間の体制をとること自体が、訪問看護の基本になっています。
オンコール体制の確認項目
面接や見学では、次の点を具体的に聞いてください。
- オンコールの当番は、月に何回か
- 1回の待機は、何時から何時までか
- 待機の手当と、出動した場合の手当は分かれているか
- 出動した翌日の勤務は、どう調整されるか
- 夜間に相談できる相手は、誰か
「オンコールは少ないです」という説明だけで決めず、直近の実際の回数を聞いてください。
オンコールの回数は、地域や事業所によって差があります。全国平均は、あくまで目安として見てください。
待機の回数と手当は、求人で先に確かめておきましょう。
訪問看護師の給与|「高い」と言われる理由と実際
公表データでは、病院勤務より低い
日本看護協会の「2025年 看護職員実態調査」では、正規雇用フルタイムの給与が勤務先別に公表されています。
| 勤務先 | 平均税込給与総額 | 平均基本給額 |
|---|---|---|
| 病院 | 396,127円 | 284,336円(全体) |
| 診療所 | 371,065円 | ― |
| 介護施設 | 364,445円 | ― |
| 訪問看護ステーション | 353,441円 | 259,761円 |
訪問看護ステーションは、主な勤務先の中で最も低い平均額でした。
「訪問看護は給与が高い」と言われることがありますが、公表データを見るかぎり、病院勤務より高いとは言い切れません。 事業所によっては基本給を高く設定しているところもありますが、それは一部です。
給与は「基本給+手当」で確認する
訪問看護の給与は、次の項目に分かれます。
- 基本給
- オンコール待機手当
- 緊急出動手当
- 時間外手当
- 訪問件数に応じた手当
「オンコール手当を含めていくら」なのか、「含めずにいくら」なのかを確認してください。
当サイトでは、手取りの下がり幅を先に計算することをすすめています。 病院から移る場合、夜勤手当と深夜割増がなくなる分を、月と年で出しておくと、生活費と比べられます。
訪問看護に向く人・向かない人
向いていると考えられる人
- 利用者と長くかかわりたい
- 手順どおりではなく、自分で考えて動きたい
- 少人数の職場で、裁量を持って働きたい
- 生活の場を支える看護に関心がある
- 移動や待機を含めた働き方を、事前に理解している
向かない可能性がある人
- 夜勤はつらいが、オンコールも避けたい
- その場で医師に確認できる環境がいい
- 判断を一人で任されることに不安が強い
- 残業や拘束時間を短くしたいことが最優先
- 運転や移動に負担を感じる
「病棟がつらかった理由」が、訪問看護にもあるかどうかを確かめてください。 人間関係がつらかった人と、夜勤がつらかった人では、確認すべき点が変わります。
応募前に確認したいチェックリスト
働き方
- ☐ 夜勤はあるか。ある場合、回数は何回か
- ☐ オンコールの当番は、月に何回か
- ☐ 待機の時間帯と、翌日の勤務調整の方法
- ☐ 日直・当直の有無
給与
- ☐ 基本給と手当の内訳
- ☐ オンコール待機・電話対応・緊急出動の手当額
- ☐ 賞与の算定期間と支給日
- ☐ オンコール手当を含めた月収と、含めない月収
仕事の進め方
- ☐ 1日の訪問件数の目安
- ☐ 移動手段(社用車・自分の車・公共交通)
- ☐ 移動時間は勤務時間に含まれるか
- ☐ 記録は事業所で書くのか、持ち帰るのか
体制
- ☐ 夜間に相談できる相手は誰か
- ☐ 1人で訪問するのか、同行があるのか
- ☐ 未経験者への教育期間と担当者
- ☐ 困ったときの相談先と、判断を仰ぐ手順
当サイトでは、働き方・給与・体制を分けて確認することをすすめています。 「アットホーム」「自由度が高い」といった言葉だけでは、オンコールの実態までは分かりません。
訪問看護の求人の探し方
1.オンコールの条件で絞る
転職サイトでは、「オンコールなし」「オンコールあり」で条件を分けられる場合があります。
訪問看護で「オンコールなし」の求人は多くありません。 見つかった場合は、本当に待機がないのか、施設内訪問看護など別の形態かを確認してください。
2.病棟以外の選択肢も同時に比べる
訪問看護だけに絞らず、クリニックや健診センターなどと並べて比べると、自分に合う働き方が見えやすくなります。
夜勤の有無だけで探したい場合は、こちらも参考になります。
3.地域の実情を担当者に聞く
訪問看護は、地域によって利用者の状態も、オンコールの頻度も変わります。
全国平均を見るだけでは、自分の希望するエリアの実態は分かりません。 担当者に、その地域のオンコール事情を確認してみてください。
訪問看護は、地域や事業所によって条件が大きく変わります。希望するエリアの求人とオンコール事情を、まとめて確認してみてください。
エリアごとのオンコール事情は、担当者に聞くのが早いです。
まとめ:オンコールを条件として受け入れられるかで決める
訪問看護は、夜勤の代わりにオンコールがある働き方です。給与は病院勤務より低い傾向があり、判断を任される場面も増えます。
一方で、利用者と長くかかわり、生活の場を支える看護ができる職場でもあります。
- 夜勤はないが、オンコールがある(64.2%)
- 平均税込給与総額は353,441円。病院勤務より低い
- 待機は自由な時間ではない。回数と手当を先に確認する
- 移動・記録・待機を含めた1日の拘束時間を聞く
- 体調がつらい場合は、休息や相談も選択肢に残す
「訪問看護に移れば楽になる」のではなく、「どの負担なら受け入れられるか」で考えてみてください。
まずは、オンコールの当番が月に何回までなら受け入れられるかを決めて、その条件で求人を探してみてください。
出典
- 一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和8年度 訪問看護ステーション数調査結果」 https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/r8-research.pdf
- 日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」報告書(勤務先別の給与・夜勤状況) https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/103.pdf
- 日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」報告書(オンコール手当額・対応回数) https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/kangochingin_report_2024.pdf
- 日本看護協会「2024年度 診療報酬・介護報酬改定等に向けた訪問看護実態調査」(夜間勤務体制・24時間対応体制加算) https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/houmonkango-chousa2024.pdf
- 厚生労働省「在宅における訪問看護の役割」(在宅医療の4機能・訪問看護従事者数) https://www.mhlw.go.jp/content/10802000/001237297.pdf
- 厚生労働省「こころの耳」心の変調に気づいたときの案内 https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/
※給与・手当・オンコールの回数は、施設や地域によって異なります。数値は各調査の公表時点のものです。 ※この記事は2026年10月時点の情報です。



コメント